2019.11.04

IT試験学習サイト『Ping-t』とLPI-Japanが語るLinuxエンジニア育成への思い

株式会社Ping-t

対談

株式会社Ping-t
代表取締役
中川 徹さん(写真左)

特定非営利活動法人エルピーアイジャパン(LPI-JAPAN)
理事長
鈴木 敦夫(写真右)

LPI-Japanは、2000年の設立以来、Linux技術者認定資格「LinuC」をはじめ、OSS-DBやHTML5など、オープンな技術に特化したITプロフェッショナルの育成のための技術者認定を行ってきました。一方、株式会社Ping-tは、IT技術者認定資格の試験勉強をサポートするサイト「Ping-t」を運営し、多くのユーザに支持される「最強WEB問題集」を提供しています。

今回は、LPI-Japan理事長の鈴木敦夫氏と、2011年から8年にわたりビジネスパートナーとしてLPI-Japanをサポートし続けてきた株式会社Ping-t代表取締役の中川 徹氏に、試験開発およびWeb問題集の開発を通じたそれぞれのLinuxエンジニア育成への思いを語っていただきました。

LPI-Japanとの連携と活動への賛同について
〜8年以上にわたる連携を通して築き上げた信頼関係

鈴木 Ping-t様とLPI-Japanが提携して今年で8年目になります。LPI-Japanがこれまで、ITプロフェッショナルの育成に役立つ品質の高い試験を開発し、広めることができたのも、Ping-t様をはじめとするプラチナスポンサービジネスパートナーアカデミック認定校などの多くの団体に支えられてこそでした。また、その存在は技術者の育成を支える大きなコミュニティだと言っても良いでしょう。LPI-Japanの活動や方針に賛同いただいてきたことを本当に感謝しています。
まずは、Ping-t様がLPI-Japanのビジネスパートナーとして参加いただいたきっかけ、またプラチナスポンサーになろうと思われた背景についてお話をお聞かせいただけますか。

中川 LPI-Japanのビジネスパートナーとして参加させていただいた8年前、Ping-tはIT技術者認定資格の試験勉強をサポートする問題集や解説をWebコンテンツとして提供し始めたばかりのまだ無名の会社でした。
当時は、まだ世間に正確性や著作権などの点でWeb問題集に偏見があり、懐疑的に見られることもあった時代です。また、確かにその頃のWebコンテンツは玉石混合で、怪しいものが多かったのも事実です。
ただ、「きちんとしたものを作ろう」と技術的な検証をしながら、オリジナルな問題や解説を作成していた私にとっては、少し辛い時期でした。
そんなときに「パートナーにならないか」と声をかけてくださったのがLPI-Japanさんでした。何よりも、偏見なく『Ping-t』のWeb問題集の成果を認めていただいたのがとても嬉しかったですね(笑)。これをきっかけに、2011年にビジネスパートナーとして参加させていただきました。
その後、プロモーション等の活動を通して、LPI-Japanが非常に信頼できる組織であることを強く感じ、5年後の2016年にはプラチナスポンサーとして再参加させていただくことにしたというのがこれまでの経緯です。

鈴木 Ping-t様が参加された当時のLPI-Japanは、Linuxの技術者認定資格がかなり浸透し、軌道に乗った頃でした。また、オープンソースもLinuxだけでなく、ミドルソフトから応用ソフトの範囲まで利用が広がっていきているときで、それに伴ってLPI-Japanも新しい試験を開発し、試験のバリエーションを広げていった時期でもあります。そうした中で、Ping-t様とのパートナー提携も我々にとって新たな取り組みの1つでした。
従来の対面による教育は大事ですし、それらのニーズが高いのは変わりません。しかし、『Ping-t』は、どこにいても学習できる環境と技術者により柔軟で勉強しやすい機会を提供してくれるものでした。
Ping-t様をビジネスパートナーとして迎えようと考えたのは、それがとても素晴らしいことで、我々としてもぜひ応援したいという気持ちが強かったからです。

最強Web問題集へのこだわり・工夫
〜技術学習の中で重要なのは「実行結果」を知ること

鈴木 Web問題集や解説には、これまでも中川さんならではのこだわりがあったと思いますが、学習者にはどのように役立ててほしいと思っていますか。

中川 『Ping-t』の基本姿勢は「解説を分かりやすく」です。学習者には1つ1つ理解しながら進めてほしいと思っています。理解していただくために心掛けていることの1つとして、必ず「実行結果」をつけるようにしています。
例えば、LinuCであれば「こういうコマンドがある」というだけでなく、「そのコマンドを打つとどうなるか」という実行結果まで紹介します。また、OSS-DBであれば、どのようなデータをSQLに流すとどのような結果になるか。HTML5であればサンプルページを作って、設問に出ているタグがどのように表示されるのかをすべて解説しています。

鈴木 確かに、実行結果を知ることは大事ですね。『Ping-t』のWeb問題集はインプットだけでなくアウトプットも促して、なおかつ作業結果の答え合わせができるという点でも優れていると思います。
学習するときには、読む・聞くだけでなく実際に自分の手を動かすことも大事です。目と耳は知識のインプットには使えますが、実際に手を動かしてコマンドを入力してみて、アウトプットすることで記憶が定着しますからね。

中川 そうなのです。実行結果をつけることで理解が進むと考えていますが、今後は更に、Web上に仮想環境を用意して『Ping-t』の学習者が利用できるコンテンツを作っていく予定です。学習者が試行錯誤しながら理解を深められるようにして、同時に資格の学習と現場の実務がより結びつくようにしていきたいです。

しっかりと知識が身に付いていなければ「一番良い選択肢」は選び出せない

鈴木 『Ping-t』では、学習者の方々が書き込んだレビューを掲載しています。そのほとんどは高い評価ですが、ときには批判的なものもあるかもしれません。それを恐れず公開しているのには、どのような意図があるのでしょう?

中川 良い評価をいただいたときはもちろん嬉しいですが、そうでない評価もあります。ただ、それも合わせてサイトに載せることがレビューの信頼性にも繋がると考えています。
これまで作ってきたWeb問題集や解説にはもちろん自信があります。悪い点を指摘していただいた場合は「改善の余地がある」と受け取り、再度プラッシュアップする機会ができたことを感謝しています。

鈴木 中川さんのより良いコンテンツを作ろうとする姿勢は素晴らしいですね。我々もより正確に技術力を認定できるように工夫をしています。
LPI-Japanが作っている認定試験の設問は選択問題が多いのですが、技術の背景やそこまでに至るさまざまな知識がないと適切な回答を選択できない内容になっています。我々がそういった問題を作成できるのは、LPI-Japanのパートナーの皆様の現場での経験と知識を反映することで、はじめて可能になっていることなのです。LPI-Japanは今後もより深い知識が問えるような試験をめざしていくつもりです。

今後の展開、ITエンジニア育成への思い
〜技術者の成長のため一歩先へとリードしていく認定をめざして今後の展開、ITエンジニア育成への思い

鈴木 LPI-Japanの目的は技術者の育成です。本質をしっかり理解した技術者を増やし、その技術者の方々に世の中で活躍してもらうことで、社会に貢献したいと考えています。
学ぶべきことは、技術の進歩に伴ってどんどん変わっていきますから、我々にはそれをしっかりキャッチアップして、技術者の方々をより良い世界に引っ張っていかなければなりません。
今後業界をリードしていくエンジニアを育成するために必要な認定は何か、また、そのために問うべき本質的な技術力とは何か。そういったものをしっかり認定できることが、信頼ある認定機関としての義務でありミッションです。

中川 私はIT技術者になる以前に塾の講師をしていまして、「どうすれば学習者の理解を促せるのか」「効率的に学習できるのか」ということを長く追求していました。
その経験を活かして、Ping-tでは解説の分かりやすさにこだわったり、システムを工夫したりしています。IT資格を通して技術を学べるサイトとして「No.1」を目指して行きたいと思っています。
これからも、そこから外れることなく今の事業を広めたいですし、さらに使いやすくすることで深めてもいきたいですね。

鈴木 中川さんが、そういうモチベーションでNo.1を目指して頑張ってくれている姿勢は、我々と共通したものを感じます。今後、技術はこれまで以上に急速に変化します。それに伴って、LPI-Japanが認定対象とする技術も増え、我々自身もその変化に合わせて変わっていかなければならなくなるでしょう。
中川さんをはじめとするパートナーの皆様と共に、より多くの優れた技術者が育ち活躍することが、LPI-Japanの目指す「技術者の育成」の到達点だと考えています。

LinuCについて
〜日本発のグローバルな認定試験『LinuC』

鈴木 LPI-JapanがLinux技術者により品質の高い認定試験の提供を実現したという意味では、2018年3月に日本発のLinux技術者認定として『LinuC』をスタートさせたことは、とても良かったと思っています。
まさに今『LinuC』の次のバージョンを開発していますが、様々な立場で業界をリードするトップ技術者、技術者教育の専門家および書籍の執筆者など、本当に多くの方々に参加していただいていて、さまざまな視点からの議論を基に、めざすべき方向性がしっかりと見えてきたところです。

中川 『LinuC』について言えば、『Ping-t』の「合格者体験記」などで「日本語が分かりやすい」という意見が多いですね。これまで、主要となるIT関連の技術者認定試験の多くは、海外で作られているものがほとんどでした。そのためにどうしても「翻訳」の域から脱せないものが多く「そもそも問題が何をいっているのか分からない」という感想を持つ人も多いのですが、『LinuC』にはそれがありません。LinuCはグローバルで英語でも受験できますが、それが「日本発」の強みかなと思います。

鈴木 日本語の問題については、我々も20年近く取り組んできました。LinuCは現在日本語版と英語版があり世界200か国で受験できますが、我々は、違う言語の地域でも同じ1つの問題でなければならないとは考えていません。個々人の技術力を正しく認定できることが本来の目的だと考えています。
言語や企業文化は各地域で異なるものであり、真のグローバルとはそれぞれの地域文化に合った最適なローカライズをすることで、決して単一の問題にすることではありません。ですから、試験範囲は共通でも、それを問うための仕組みである認定試験の問題そのものは各地域の言語や企業文化に合わせてローカライズするべきだと思います。
その意味でも、LPI-Japanが現場のトップエンジニアや教育の推進者の意見を取り入れて日本語で作り上げた『LinuC』は、より日本のLinux技術者の実力を正しく判定できる認定試験であり、また学習環境まで考えた認定試験になっています。
これにより、日本のIT技術者に真の技術者としてグローバルに活躍してもらうことが、我々の目指しているところです。      

中川 今後の『LinuC』の発展に期待しています!

このインタビュー記事は、オリジナルとしてThink ITに掲載された記事を転載した記事となります。
2019年11月14日 掲載
『IT試験学習サイト『Ping-t』とLPI-Japanが語る Linuxエンジニア育成への思い』


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