2021.06.24

Linuxの基本を押さえることが、自律した技術者になる第一歩と考え、LinuCの認定取得を昇級の必須要件に

鈴与シンワート株式会社

企業・合格者の声

#エンジニア育成

鈴与シンワート株式会社
品質管理部長
森川 直昭さん(写真左)

システムインテグレーションカンパニー サービステクノロジー事業部技術ART シニアスペシャリスト
守屋 直揮さん(写真右)

システムインテグレーションカンパニー サービステクノロジー事業部 技術ART トレーニー
一戸 祐汰さん(写真中央)

鈴与グループの一員でありながら、売上の大半がグループ外企業という鈴与シンワート株式会社。独立系SIerとして、ソリューション、 ITインフラ、テクノロジーの3つの業務ドメインを展開しています。同社の中で最先端のテクノロジーを手がけるサービステクノロジー事業部では、「自律した技術人材の育成」を重視し、LinuC をWeb アプリケーションやBI開発に不可欠なOSを学べる社内認定資格と位置付けています。同社の人材育成やLinuC資格への評価を伺ってみました。

Linuxを押さえることは自律した技術人材になる重要な要素

----幅広い事業ドメインをお持ちですが、御社の基本的な人材教育の考え方をお聞かせください。

森川 基本的な教育理念としては、「みずから学ぶ人材づくり」が挙げられます。自分から進んで学習し、新しい技術や分野を仕事の中で学びつつ開拓していける技術者ですね。当社には約700名のエンジニアがおり、事業ドメインごとに事業内容も技術も異なるため、基本の部分以外は、部署ごとに最適化された専門教育を行っています。

中でも守屋と一戸の所属するサービステクノロジー事業部は、最先端の技術を使って大規模ソリューションや新規サービスを開発する、当社の技術開発の先頭集団です。同事業部ではWebアプリケーションやBI開発を扱うため、OS にLinux を採用するケースが非常に多く、Linuxをベースに総合的に学習できることから、LinuCの資格取得を積極的に進めています。

----サービステクノロジー事業部がLinuC に着目された具体的な理由や、ご評価いただいているポイントなどをお聞かせください。

守屋 私たちのチームはアジャイル開発がベースとなっているため、技術者には自律した開発能力が求められます。新しい技術なども自分から進んで学ぶ姿勢が必要ですが、それには基礎をしっかり固めてあるのが前提になります。開発部門の基礎といえばやはりプログラミングですが、私たちの業務の実装環境はLinuxが大部分を占めています。そこでLinux をベースに、さまざまな内容を総合的に学習できるLinuCの資格取得を重視しています。

また最新の技術としてはコンテナ仮想化がありますが、これに関してもLinux の基礎をしっかり理解していないとできません。現場のメンバーから「Dockerを使おうとしてもうまくいかない」と相談されて、よく聞いてみると、そもそもLinux の基礎学習ができていない。そういう場合は、LinuCレベル1 の教本を渡して、ひと通り学んでくるように伝えます。当チームでは、Linux の基本を押さえることも、自律した技術者になる重要な要素だと考えています。

職級のアップには決められた認定資格の取得が条件になる

----LinuCの資格取得が、技術レベルや業務の習熟度の評価基準の一部になっているのですか。

森川 当社では、社員を役割・職務に応じてG0~G6と呼ばれる職級に分けています。入社直後のG0からスタートして、2〜3年目でG1へ上がっていき、事業部長クラスでG6となります。この昇級の条件に、資格取得があります。事業領域や技術分野ごとにさまざまな資格が対象になっていますが、LinuC はベンダー非依存で基本的なコンピュータの振る舞いを学べる一つの基準として位置付けられています。G0からG1への昇級にはLinuC レベル1、G1からG2へはLinuC レベル2、さらにG3へはLinuC レベル3の取得が必要としている部門もあります。

(鈴与シンワート説明資料より)

----そうした資格取得も含めて、社内の研修体制はどのようになっていますか。

守屋 事業部ごとに、独自の教育カリキュラムや教材、学習機会が設けられています。サービステクノロジー事業部では、いわゆる階層別教育=Gxの職級に応じて必要な研修が割り振られています。LinuC に関する研修はG0~G2で行われ、それぞれの職級に応じた能力の習得が義務付けられています。

----その他、認定資格取得のための具体的な支援制度があればお願いします。

森川 業務に必要な資格については、会社で費用負担しています。本人が希望して申請する場合と、会社から業務の必要上指示する場合があります。基本的には、事業戦略を踏まえて上司が育成計画を検討し、受験させた方が良いと判断した場合は、その旨アドバイスするといったケースが多いですね。

実機でコマンドを打って確かめる「受験勉強」で実力をつける

----一戸さんは、すでにLinuCレベル1を取得されていますが、受験を決めた経緯をお聞かせください。

一戸 私は現在入社3年目ですが、まずG0からG1に昇級する要件としてLinuC レベル1の取得がありました。最初はLPICも検討していたのですが、LinuCが新たに始まったと聞いて、双方の違いや、その学習を通してどんなことが身につくかなどを、自分の受験を通して調査し社内に還元したいと考え、LinuC レベル1に挑戦することにしました。

LinuC レベル1を選んだ最大の決め手は、LPICと比較してLinuCの方が現在の主流開発を出題範囲にしている点でした。LPICはDockerやコンテナは出題範囲として扱っていません。そこでLinuC レベル1は基礎力を固めるのに最適と判断して、2020年の7月に認定を取得しました。

----試験勉強で最新の技術領域を学んだことは、いまのお仕事で役に立っていますか。

一戸 ちょうど資格を取った当時はAWS 関連の業務に携わっていて、自分でコマンドを叩いて細かい設定を行う際や、プロジェクト管理ソフトウェアのインストール作業の際などに学んだことが役立ちました。たとえば何かエラーが発生したときも、「何かが起きた」で止まってしまわず、自分でエラーを読み取って解決策を考えることができました。また、誰かに相談する時も具体的に状況説明ができるので、具体的なアドバイスをもらうことができました。

----これから LinuC レベル1に挑戦しようという方に、学習のポイントなどをお聞かせください。

一戸 いちばん効果があったのは、実機を用意してコマンドを叩いて、その結果を見るという反復学習でした。オプションなどが非常に多いので、教科書を暗記するだけでは憶えきれません。実機でそのオプションを使ったらどんな違いが出るのか、一つずつ確かめていったことが、合格につながったと思っています。

また、これは反省ですが、私は大学時代からいろいろな資格に挑戦していましたが、合格自体が目標になっていました。しかし、実際に入社して仕事で技術を用いるようになって、合格が目標ではなく、そこで会得した知識や技術をどう使うか=合格のその先まで見据えて取り組まなくてはならないとわかりました。受験しようと考えている方も、ぜひ合格したら仕事でどう生かすのかを考えてみることをお勧めします。

最新のAIや機械学習の開発でもLinuxは避けて通れない

----最近、AI や機械学習の分野を志望する方が急増しています。先端分野の専門家から、そうした方々に一言アドバイスをお願いします。

守屋 先端技術のBIなどの動作環境の多くはLinuxです。それをさらに効率よく速く動かすとか、プラットフォームから起ち上げる場合などは、やはりOSを熟知していないとできません。その意味でも、いまいちばん情報が多く学びやすい Linuxを学んでおくのはすべての点で役に立ちますし、この先ほとんどの開発系技術を手がける上で通っておくべき道だと思います。

アジャイル開発やビジネスドリブンなシステムの要求が高まるなか、そのつど、誰かに実行環境を用意してもらうのでは、とてもスピード感のある開発はできません。ましてクラウドサービスが当然の時代には、必要となったらすぐに作れるのは当たり前です。機械学習にしても、たとえば機械学習用のライブラリの導入にはGPUが必要な場合が多く、これもLinux の知識があると環境構築の難易度がぐっと下がります。

----先端技術を手がけるにも、常に基本をというわけですね。最後に、今後の鈴与シンワートの技術人材育成について抱負をお聞かせください。

森川 新人教育では、基礎は変わらずOSとデータベース、プログラミングの三本柱を堅持していきます。その上で、OS 周辺の技術やクラウドサービスが今後さらに発展していくのは確実ですので、そのつど必要な新しい技術要素をカリキュラムに盛り込んでいきたいと考えています。

システム開発という仕事は人がすべて、人が財産であり、この能力の総和が会社の力になっていきます。前向きに進んで学び、課題に取り組んでいける自律した技術者人材の育成は必須かつ継続した課題です。さまざまな資格試験もトリガーに、学習・研鑽の機会などを各人が有効に利用して育っていって欲しいと思いますし、その頑張り・成果を会社がきちんと評価できる仕組みを整えていきたいと考えています。

----ぜひLinuCも、そうした御社の若い技術者の皆さんに、実力アップの契機としてご利用いただければと思います。本日はどうもありがとうございました。

このインタビューは2021年6月1日に行いました。


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