2024.11.20
LinuCで学んだ知識は現場の共通言語となる~ Linux習得の先にDXを担う高度な技術習得へ ~
社会インフラソリューション事業部
プロフェッショナル(シニア)
大川 真司 氏(写真右)
1989年入社。交換や移動体開発業務に長年従事し、2013年から仮想化/Cloud事業を担当。事業部CTOとしてトレンド技術の取り込みやDX人材育成に伴う資格取得推進も担う。
共通技術推進本部 基盤技術コンサルグループ
シニアマネージャー
井口 省吾 氏(写真左)
1998年入社。DX人材育成ワーキンググループではリーダーを務めている。
目次
日本電気通信システム株式会社におけるLinuxスキル育成のはじまりから現在まで
日本電気通信システム株式会社(以下、NEC通信システム)は、NECとともに国内外の通信ネットワークの開発や構築を担う企業として1980年に設立されました。主な事業領域はテレコム、セキュリティ、産業DX、モビリティです。長年テレコムで培ってきた技術力をベースに高品質・高信頼性のサービスを幅広く提供しているのが強みです。近年では成長領域のDXを推進していくために、セキュリティ、AI、クラウド分野の人材育成に注力しています。
同社ではテレコム分野を手がけているため、Linuxは登場したころから早々と着目していました。2003年には技術の調査研究に特化した技術センターを立ち上げ、Linuxをソースコードから読み解くなど研究活動も開始しています。業務現場でLinux活用が広がると、若い世代のLinuxスキル底上げとしてLPIC資格取得支援にも早くから取り組んできたという経緯があります。
2021年度からは全社CTO活動としてDX人材育成を推進しており、そのなかにLinuxスキル育成も組み込まれています。これはNECグループのDX人材育成やスキル定義に準じるようにあらためて整備した形です。同社では開発やSIの実践的なスキルが必要とされるため、DX人材の認定条件に資格取得と実践研修を義務づけているのが特徴です。
なお同社ではNECグループが定義するDX人材の割合が全社員の約4割を占めており、これはNECグループの中では際立つ高さです。
LinuC認定取得支援制度と認定者数
DX人材育成活動ではLinuCを推奨しているため、同社のOSS人材(DX人材に含まれる)の認定要件でもLinuCの認定取得を定めています。特に通信系領域の人材育成組織(ソフトウェア開発センター)では、(LinuCが開始した)2018年からLinuCの取得を義務づけています。LinuC Lv1は必須で、Lv2以降は選択としています。
現在ではLinuC認定の取得者数は300名以上を超えています。
全社施策ではDX人材関連資格の受験料補助があり、更にソフトウェア開発センターではLinuC取得支援施策として、外部研修および受験費用(合格時)を補助しています。なおDX人財育成を推進していくためにLinuCも含め、対象の認定資格であれば、不合格時も1回まで補助しています。
他にも同センターでは認定取得者の受験体験談をまとめており、受験対策に役立つナレッジとして活用しています。
技術者と企業、双方からのLinuC取得メリット
技術者がLinuC認定を取得するメリットについて、井口氏は次のように話しています。「資格は証明のためのツールに過ぎませんが、エンジニアとしては資格を取得することで自信につながります。特に我々はLinux解析の専門部隊であり、知識だけではなくスピードが求められます。調査の現場でいちいちコマンドを調べている余裕はありません。様々な業務を遂行していくにあたり、体系化された知識とスキルを身につけて、迷いなく適切なコマンドを打てるような技術を身につけていることが大事です」
一方、企業の視点ですと井口氏は「LinuC認定には幅広い技術要素が盛り込まれていて、LinuxやOSを体系的に学ぶことができるのがメリットです。LinuCを通じて学んだことは実務現場における共通言語となりますので、最低でもLinuC Lv1の知識は必須です。
当社ではソフトウェア開発やネットワークSIなど多くの業務があるため、若手だとLv2まで取得していれば安心して業務を任せることができますね」と言います。
Linuxを学んだ先にはDXの本命となる専門技術の研さんへ
NECやNEC通信システムでは幅広く高度な最先端技術に取り組んでいるため、DX人材育成のなかでLinuCは基礎という位置づけです。Linuxは入口に過ぎず、注力する必要があるのはその先に広がっています。社会インフラソリューション事業部では、市場動向を踏まえ、現在ではAI、クラウド、セキュリティ中心に推奨資格を選定し、社員およびビジネスパートナーに明示して戦略的にスキルアップを促しています。
大川真司氏は事業部CTOの立場から、事業部員に向けて「業務時間の1割を自己研鑽に充てられるようにしてほしい」と依頼しているそうです。技術進化が激しい中、DX関連事業を成長させていくには技術力を高めることが不可欠であるためです。主要なトレンド技術では組織横断的なワーキンググループを結成するなど、組織的な技術の底上げ目指しています。
若手中心の動きも活発です。井口氏は「私の部門では、有志が社内定例勉強会を定期的に開催し、資格や最先端技術に関する情報交換を活発に行っています」と話しています。また大川氏は「毎週火曜日にはトレンド技術をテーマとした技術中期計画活動が開催されています。あらかじめテーマを決め、興味ある分野で発表を行い、情報交換することが定着してきました。」と話しており、同社ではトップダウンの育成活動と並行して、若手を中心としたボトムアップの活動も盛んになっています。
昨今ではパブリッククラウドのマネージドサービスを選択すれば、OSやネットワークの高いスキルはさほど必要ではなくなりつつあります。しかし同社が手がける案件ではオンプレやハイブリッドもあり、Linuxの知識や経験は依然として不可欠です。
今後の人材育成について、井口氏は「当社はNECグループでもトップクラスのDX人材割合を保有しています。今後もLinux等のOSS人材も含めたDX人材育成を強化します」と述べ、大川氏はその先として「上流を担えるアーキテクト人材の育成にも力を入れていきます」と今後の抱負を語りました。
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