仮想化を実現するソフトウェア|VirtualBox
【連載コラム:仮想化技術をしっかり解説します(4)】
手軽に利用できるホストOS型の仮想マシンソフトウェア「VirtualBox」のインストールの仕方を解説
今回から、仮想化を実現するソフトウェアについて解説します。今回は、最も手軽に利用できるホストOS型の仮想マシンソフトウェアであるVirtualBoxについて解説します。
目次
ホストOS型仮想マシンソフトウェアの特徴
まず、ホストOS型の仮想マシンソフトウェアの特徴をおさらいしておきましょう。
ホストOSとゲストOS
ホストOSとは、通常我々がコンピューターを動かす時に使っているOSのことです。仮想マシンで動作させるOSをゲストOSと呼ぶので、それらを動かす基盤という意味でホストと呼ばれます。
ホストOSがあることで、基本的な管理作業をすべてホストOSが提供するGUI上で行えることがホストOS型のメリットといえます。
VirtualBoxは、Windows、macOS、Linux、Solarisと、沢山のホストOS上で動作するので、使い方を覚えておくと色々な環境で使えるので、エンジニアのツールとしても適用範囲が広いというメリットがあります。
デメリットは速度
ホストOS型は使い勝手が良いですが、特にストレージの読み書きの速度が遅くなるという難点があります。これは仮想ディスクファイルを仮想マシンのストレージとして利用しており、ファイルはホストOSの汎用的なファイルシステム上で実現しているためです。ただし、最近ではSSDのような高速なストレージを使うようになっているため、ホストOS型であるオーバーヘッドを差し引いても実用的なストレージ性能となっています。
学習用や検証用、ちょっとしたシステムに使う程度であれば、気にならないと考えていいでしょう。ただし、読み書き性能が遅いHDDの場合、複数の仮想マシンを動作させて同時に読み書きを行わせると、実用に耐えない性能になるので注意が必要です。
VirtualBoxの使い方を紹介します
VirtualBoxの基本的な使い方は、私が作成した資料で別途詳細に解説しています。まだVirtualBoxを触ったことがない人は、まずこちらの資料を参考にしてインストールしてみてください。
講義形式の解説動画も用意されていますので、合わせてご覧ください。
VirtualBoxの仮想ネットワーク機能
VirtualBoxを活用する上で、しっかりと理解しておきたいのが仮想ネットワークの機能です。Linuxの学習や活用のためにはネットワークの理解が不可欠ですが、これから勉強を始めるという人のために、ひとまず知っておいて欲しいレベルで解説します。
インターネットに接続するにはNAT機能を使う
NAT(Network Address Translation)は、外部ネットワークに接続するための技術です。たとえば、皆さんの自宅にあるPCやスマートホンから、契約している光回線を経由してインターネットに接続するには家庭用ルーターを経由していますが、このルーターが使っているのがNATです。ここではとりあえず、NATを使うと外部に接続できる、と理解しておいてください。
VirtualBoxでは、仮想マシンに接続されているネットワークアダプタの動作をNATに設定することで、仮想マシン上のゲストOSが、ホストOS側のネットワーク接続を経由して、インターネットに接続できるようになります。
仮想マシンを新規作成すると、デフォルトでNATに設定されたネットワークアダプターが1つ、仮想マシンに用意されています。ですので、特に何もしなくても外部接続ができるようになっています。
ホストOSと接続するにはホストオンリーアダプターを使う
学習環境や検証環境として使う場合、ホストOS上で動作するWebブラウザやターミナルソフトなどをゲストOSに接続させたいことが多くなります。このような接続にはホストオンリーアダプターを使います。
ホストオンリアダプターは、ホストOS上に作られる仮想のネットワークアダプターです。この仮想アダプターは、対応する仮想スイッチに接続されます。そして作成した仮想マシン側でも同じ仮想スイッチに接続するように設定することで、ホストOSとゲストOSが直接通信できるようになります。
仮想マシンには2つのネットワークアダプターを用意しよう
NATとホストオンリーアダプター、それぞれ別々のネットワーク接続として扱われるので、基本的には仮想マシンには2つのネットワークアダプターを用意します。
NATに設定されたネットワークアダプターは仮想マシン作成時にデフォルトで用意されるので、仮想マシンの設定からもう1つのネットワークアダプターをホストオンリーアダプターとして追加設定してください。
VirtualBoxを沢山使ってみよう
VirtualBoxは、GPLでライセンスされているオープンソースソフトウェアなので誰でも自由に使えることや、各種OS上で動作することから、学習用としてだけでなく、業務でのツールとしても十分活用できます。使い方を覚えることで、実務においても格段に効率がよくなるので、沢山使って慣れるとよいでしょう。
ネットワークの設定に若干癖があるので、説明したようにNATとホストオンリーアダプターの動作の仕組みをしっかりと理解し、適切に利用できることが活用のポイントといえます。実際に動かしてみて、その動作を確認してみてください。
- 筆者紹介
宮原 徹 氏
Linux標準教科書、Linuxサーバー構築標準教科書などの監修者。LinuCレベル1/レベル2 Version10.0の改訂作業にも協力。また、幅広いOSSに関する情報提供の場として「オープンソースカンファレンス(OSC)」の企画運営も。
バックナンバー
第10回:クラウド利用の留意点
第9回:オンプレミスのクラウド環境
第8回:たくさんあるぞ!クラウドサービス
第7回:クラウド〜仮想化技術の活用系〜
第3回:第3のサーバー環境「コンテナ」
第2回:仮想化の種類と特徴