サーバー構築をハードウェアの視点から考えてみる

【連載コラム:Linuxでサーバーを構築してみよう(3)】
サーバー構築の環境には、自分のマシンを使ったりVPSやレンタルサーバーの利用を検討しますが、それぞれについてのポイントを解説します。

最終更新日:2023年03月16日

前回、サーバーを構築する際に利用するソフトウェアの選び方を考えてみました。3回目となる今回は、ハードウェア面について考えていきます。


自分で調達するだけではないハードウェアの選択肢

現在ではサーバーは自分の会社の中にマシンを調達し、そこに構築するという手法だけではなくなりつつあります。

自分でサーバーマシンを調達し、自分が管理している施設内で運用する方法を「オンプレミス」と呼びます。かつてはサーバーの運用といえばオンプレミスが主流だったのですが、現在ではオンプレミスは選択肢の1つとなりつつあります。他の選択肢としては、「自分でサーバーマシンを構築する」「レンタルサーバーを利用する」「VPSを利用する」などがあります。それぞれの選択肢について、どのようなものか、メリットデメリットなどを解説していきます。

クラウドは?

今回、選択肢にクラウドサービスの利用を入れませんでしたが、もちろんクラウドサービスを利用することもできます。ただし、クラウドサービス自体も非常に幅の広いサービスが提供されているので、クラウドサービスの利用についての解説は別の連載に譲りたいと思います。

自分でサーバーマシンを構築する

1つの選択肢として、自分でサーバーマシンを購入し、自分のサーバーを構築するというものがあります。本稿ではこれを「専用サーバー」と呼ぶことにします。

「専用サーバー」の場合、やりたいことに合わせたスペックのマシンを購入でき、マシンのすべてを自分でコントロールできるようになるため、自由度が高くなるというメリットがあります。一方、構築や管理の手間は他の選択肢に比べて大きくなります。ほとんど自由になるということは、すべて自分でやる必要があるということでもあるのです。専用サーバーの構築を行う際、スペックをどうするか?からソフトウェアの設細部までセキュリティの信頼性もすべて自分で上げる必要も考えると、手間はかなり大きなものになると言えます。

まとめると、スペックは自由に選べ、他人に気兼ねすることなくサーバーを操ることができる代わりに、サーバー運用の全責任を自分が持つ必要があるという点が「専用サーバー」の選択肢の特徴です。メンテナンスは、物理的に自分の近くにあるぶんレンタルサーバーなどに比べてやりやすいとも言えますが、サービスを受けることができないと考えるとやりにくいということもできます。

専用サーバの設置場所

また、専用サーバーを構築する場合にはさらにサーバーの設置場所についても考える必要があります。これについては、たとえば「自分が管理する施設に設置する」「データセンターに設置する」の選択肢があります。データセンターは、サーバーを預かるためのサーバーラック、UPS(無停電電源装置)、ネットワークがそろっており、温度や湿度も管理されています。自分の施設内に設置する場合はこれらのことも考え合わせる必要がでてきます。ただし、データセンターに設置すると、物理的に自分の直近に存在するわけではなくなるため、トラブル発生時などにデータセンターに赴く必要が生じる場合もあります。

VPSを利用する

VPS(Virtual Private Server)とは、日本語に訳すと「仮想専用サーバー」となります。VPSは、「ユーザごとに(仮想ではあるものの)丸ごと1台のサーバーが貸し出される」サービスになります。特定のサービスのみが利用できる「レンタルサーバー」と、先述の「専用サーバー」の中間的なものとして提供されています。

VPSでは管理者権限が渡されるため、高い利便性を享受することができます。設置場所を気にする必要はなく、マシンの調達なども必要ありません。自由度は専用サーバーと比較しても高いですし、他者に気兼ねする必要もほとんどありません。責任の大部分を自分が持つ必要がある点も似ています。

ただし、何らかの理由でネットワーク経由でのメンテナンスが行えなくなってしまった場合には、何もできなくなってしまいます。これは管理者の責任とは言えませんが、ハードウェアやネットワークなどの運用をVPSのサービス提供者に任せているメリットの裏返しということになります。

レンタルサーバーを利用する

一般的なレンタルサーバーは、ソフトウェアがすでにインストールされていたり、システムがある程度出来上がっているものを貸し出すという形態を取ります。よくあるレンタルサーバーは、Webサイトとメールサーバーが使える、というようなものです。このため、手間が大幅に軽減できます。一方で、自由度はかなり低く、決まったソフトウェアしか利用できない可能性もあります。また、仮想化されたサーバーを貸し出すことが多いため、同じハードウェアで動作している第三者のサーバーに大きな負荷がかかったときに、その影響を受ける可能性もありえます。これを「ノイジーネイバー」(騒がしいご近所さん)と言います。

レンタルサーバーを利用する場合には、提供されるサービスについて十分な下調べを調査を行い、十分に理解しておく必要があります。

ソフトウェア選びとハードウェア選びは表裏一体

前回、ソフトウェアを選ぶという切り口で話を進めましたが、この時にハードウェアをどうするかということも同時進行で考えることになります。ソフトウェアに合わせてハードウェアを選ぶだけではなく、ハードウェアに合わせてソフトウェアを選ぶという観点もあり、この両方を見据える必要が出てきます。ここでの検討をせずに、選択を間違えてしてしまうと、後々大変な苦労を背負いこむ危険もあります。さまざまな角度から検討を行い、ソフトウェア、ハードウェアの双方で適切な組み合わせを選んで下さい。

とは言うものの、サーバを実際に運用する際には、事前に検証環境を作り、実際に運用してみるという作業を行うことが推奨されます。この事前検証を行ってみて、利用するソフトウェアやハードウェアを決めるということもあります。最初から何が何でもこれでいく!と決めつける必要はありません。事前検証を行いながら決めていくという考え方もあるのです。

次回は、事前検証環境について、見ていきましょう。

筆者紹介
川原 龍人 氏

川原 龍人 氏

1975年生まれ。
著書に「BIND9によるDNSサーバ構築」、「シェルスクリプト ポケットリファレンス Bash編(技術評論社)」など。
予備校講師としても活躍中。Linuxとのつきあいは20年を超える。

バックナンバー

第14回:バックアップ

第13回:異常発生時の対応

第12回:サーバー構築という仕事

第11回:ユーザー教育の重要性

第10回:テスト環境を構築する

第9回:ログローテーションとは

第8回:ログの取得と管理

第7回:アクセス制限

第6回:OpenSSHの活用

第5回:ユーザーアカウントとアクセス制限

第4回:テスト環境を構築する

第3回:サーバー構築をハードウェアの視点から考えてみる

第2回:CMSを使ったWebサイトを構築するには?

第1回:Linuxでサーバーを構築しよう

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