ITだけでなくマネジメントや経営まで問う国家資格「基本情報技術者試験」
このコラムはITエンジニアを目指して就活をしている人を対象に、さまざまな情報をわかりやすく解説していきます。
このコラムは主に就活をしている学生を対象に、ITエンジニアを目指して活動する上で役立ちそうな情報をお届けしていくコラムです。もちろん就活生以外にも役立つ内容となっていますのでぜひご覧ください。
今回は、以前公開したITパスポートに続き、情報処理推進機構(IPA)が実施し、経済産業省が認定する国家試験でITエンジニアを目指す人のIT基礎力を問う登竜門的な試験とも言える基本情報技術者試験について紹介したいと思います。
目次
問われること
さっそくですが、基本情報技術者試験で問われる内容をご紹介します。
大きく分けると、次の3分野になります。
- コンピューターの仕組み、基礎理論、プログラミング、各種技術要素などのテクノロジー系
- 管理する立場で必要となる内容を問うマネジメント系
- 組織を経営する立場で必要となる内容を問うストラテジ系
つまり、IT基礎力を問う試験と言いつつも、マネジメントやストラテジといった就活中の学生の皆さんには少し馴染みが薄い分野からも問われるのが特徴です。
ITパスポート試験との違いは主に実施方法と難易度です。
ITパスポートは通年ですが基本情報技術者は年2回の実施です。また、ITパスポートは対象者が社会人全般ですが、基本情報技術者は対象が情報技術者であるため専門性が高く知識以外に技能も問われるためその分難易度も高くなります。
基本情報技術者試験の対象者
基本情報技術者試験の受験資格は特にありませんが、対象とされている人物像は以下のように定義されています。
業務と役割
基本戦略立案又は IT ソリューション・製品・サービスを実現する業務に従事し,上位者の指導の下に,次のいずれかの役割を果たす。
- 需要者(企業経営、社会システム)が直面する課題に対して,情報技術を活用 した戦略立案に参加する。
- システムの設計・開発を行い,又は汎用製品の最適組合せ(インテグレーション)によって,信頼性・生産性の高いシステムを構築する。また,その安定的な 運用サービスの実現に貢献する。
期待する技術水準
- 情報技術を活用した戦略立案に関し、担当業務に応じて次の知識・技能が要求される。
- 対象とする業種・業務に関する基本的な事項を理解し,担当業務に活用できる。
- 上位者の指導の下に,情報戦略に関する予測・分析・評価ができる。
- 上位者の指導の下に,提案活動に参加できる。
- システムの設計・開発・運用に関し,担当業務に応じて次の知識・技能が要求される。
- 情報技術全般に関する基本的な事項を理解し,担当業務に活用できる。
- 上位者の指導の下に,システムの設計・開発・運用ができる。
- 上位者の指導の下に,ソフトウェアを設計できる。
- 上位者の方針を理解し,自らソフトウェアを開発できる。
基本情報技術者試験の概要
試験の概要や試験の方式などは以下の通りです。受験する前にはIPAのホームページで最新の情報をチェックするようにしてください。
概要
受験資格:なし
受験費用:7,500円(税込)
試験形式:CBT方式または特別措置試験(*)
実施時期:上期(4〜5月頃)、下期(10〜11月頃)
試験会場:全国167ヶ所
*)
身体の不自由等によりCBT方式で受験ができない方のために筆記による方式の試験を実施
試験の方式
基本情報技術者試験は、コロナウィルス感染症流行の影響により、従来の筆記式からCBT方式に変更されました。
基本情報技術者試験を請け負っているプロメトリックの公式サイトで、CBTの試験会場で使用するログインから試験終了までの操作方法を実際の画面の画像を用いて説明しているので受験する場合は必ず目を通しておきましょう。
試験当日の流れ(プロメトリック株式会社)
http://pf.prometric-jp.com/testlist/fe/exam_procedure.html
採点方式・配点・合格基準・合格発表
基本情報技術者試験は、午前試験と午後試験の2つで構成されます。
午前試験は、4つの選択肢から1つの回答を選ぶ問題が80問出題されます。
午後試験は、全部で11問出題されますが、その中から5問を選択して回答します。
午前と午後の試験の得点がすべて基準点以上の場合に合格となります。午前と午後どちらか一つだけが基準点以上の場合は不合格になります。
なお、午前試験と午後試験は試験の名称で、実際の試験や予約可能な時間帯を示すものではありません。午前試験を午後の時間帯、または午後試験を午前の時間帯に予約することも可能です。
合格発表は、午前試験と午後試験の2つが完了した翌月下旬にIPAのWebサイトに掲載されます。
合格者に対しては、経済産業大臣から「情報処理技術者試験合格証書」が交付されます。
午前試験の出題範囲
午前試験は全部で80問出題され、すべてに解答する必要があります。
50問がITに関する問題で基礎理論やコンピュータシステム、技術要素や開発技術について問われます。
それ以外の30問のうち10問はITではなくプロジェクトやサービスのマネジメントに関する内容、残り20問が企業の経営や戦略、法務などの内容が問われます。
100点満点中60点以上で合格です。
午後試験の出題範囲
午後試験は、11問中5問を選択して解答します。問1の情報セキュリティと問6のデータ構造及びアルゴリズムの問題は解答が必須になります。問2から問5、問7から問11は複数の出題から決められた解答数を満たす問題を選択して解答します。
各設問の選択肢は3〜9択で、100点満点中60点以上で合格です。
受験の申し込み
プロメトリック株式会社が運営している専用の申込サイトから申し込みます。
基本情報技術者試験(プロメトリック株式会社)
http://pf.prometric-jp.com/testlist/fe/index.html
受験料の支払い方法はクレジットカード、コンビニエンスストア払い、Pay-easy払いで支払方法によって予約可能な日程が変わります。
クレジットカードの場合
受験希望日の3営業日前まで(土・日受験の場合は4営業日前まで)予約可能です。
コンビニエンスストア払い・Pay-easy払いの場合
受験希望日の4営業日前まで(土・日受験の場合は5営業日前まで)予約可能です。
応募者数と合格率
直近3年間の受験者数と合格者数です。
2021年度の合格率は約41%で、比率は社会人が72%、学生が28%でした。
今後の基本情報技術者試験について
IPAは、基本情報技術者試験と情報セキュリティマネジメント試験について、さらなる利便性の向上を目指し、通年試験化に向けて、試験の実施方式、出題範囲などを変更内容を公開2023年4月から開始する予定としています。
通年試験化によって、年2回(上期・下期の一定期間)実施していた試験を、受験者が都合の良い日時を選択して受験することができるようになり、年間の受験可能回数も増えることになります。併せて、試験時間を短縮することによって受験者の利便性が高まる、としています。
情報処理技術者試験における出題範囲・シラバス等の変更内容の公表について(基本情報技術者試験、情報セキュリティマネジメント試験の通年試験化)
https://www.jitec.ipa.go.jp/1_00topic/topic_20220425.html
まとめ
基本情報技術者試験は国家資格であり、試験では特定の業界、特定の業務、特定の企業に特化しない、幅広いIT関連の知識が問われるため、横断的な知識を身につけられます。
ただし、基本情報技術者試験に合格したからといってすぐ活躍できるエンジニアになれるか、といえば別の話と言えそうです。それは出題範囲の解説の中でご紹介した通り、基本情報技術者試験の中では具体的な操作のためのスキルが問われるわけではないからです。
従って、自分が目指すエンジニア像をイメージしたとき、基本情報技術者試験にプラスして必要なスキルはどういうものになるのか、ということを見つけておく必要がありそうです。