バックアップについて
今回は、バックアップの基本的な考え方について解説します。【連載コラム:Linuxシステム管理標準教科書を読む(25)】
Linuxの基本的なスキルを習得したら、Linuxサーバーをシステムとして長期に運用管理していくためのスキルを身につけるのはいかがでしょうか。このコラムでは、「Linuxシステム管理標準教科書」の全体調整を担当した筆者が改めて大切なポイントを解説していきます。
バックアップは、システムの障害発生時、あるいはセキュリティ攻撃でデータを読み出せなくなってしまった時などに、既存のデータを復元するために行っておくべき重要なシステム管理作業です。様々なバックアップの方法がありますが、失われたら困る、元に戻すのが困難なデータを保存しておく、という基本的な考え方においては共通しています。ここではバックアップの基本的な考え方について解説します。
何をバックアップするのか
まず、バックアップの対象を決めなければなりません。バックアップ対象となるシステムは、以下のような要素で構成されています。
- OS
- ライブラリ
- ミドルウェア
- アプリケーション
- 各種設定
- データ
それぞれについてのバックアップにおける特性を見ていきましょう。
OS
OSは、再インストールをすることで元に戻せるので、バックアップ対象から外れることもあります。リストアする際にOSも含めて戻すために丸ごとバックアップするのか、再インストールからリストアするのかによって異なります。
ライブラリ
各種ライブラリは、OSの標準的なものと、追加でインストールしたものに分かれます。アプリケーションと一体となって動作するため、アプリケーションのバックアップとセットで考えておく必要があります。
アプリケーション
アプリケーションは、各種オープンソフトウェアのようにOSと一緒に再インストールが可能なものと、独自に開発した他には存在しないアプリケーションに分かれます。特に後者の場合には、実行可能なバイナリーだけでなく、開発したソースコードをどのようにバックアップ保管しておくかまで考えておく必要があります。
各種設定
OSやアプリケーションのための各種設定は、できるだけバックアップを取得しておくのが望ましいでしょう。場合によっては、手順書のようなドキュメントや、自動化して再設定が容易に行えるようにしておく場合もあります。
データ
データも、大元になるものが存在している場合には良いですが、日々追加されるデータは小まめにバックアップしておく必要があります。
すべてをバックアップするのがいいように思えますが、バックアップ対象の容量が多くなればなるだけバックアップやリストアにかかる時間が長くなったり、バックアップメディアの容量が必要となります。それらの要因も考慮して、バックアップ対象を選定します。
次回は、バックアップ方法について解説します。
- 筆者紹介
宮原 徹 氏
Linux標準教科書、Linuxサーバー構築標準教科書などの監修者。LinuCレベル1/レベル2 Version10.0の改訂作業にも協力。また、幅広いOSSに関する情報提供の場として「オープンソースカンファレンス(OSC)」の企画運営も。
<Linuxシステム管理標準教科書とは>
「Linuxシステム管理標準教科書」(システム管理教科書)は2015年4月にリリースされた標準教科書シリーズの1冊です。Linuxシステムの運用管理という観点で書かれており、システム管理者という業務において知っておかなければならない基本的なトピックが解説されています。「Linux標準教科書」「Linuxサーバー構築標準教科書」でコマンド操作やサーバー構築の基本を学んだら、このシステム管理教科書を読んで、単にLinuxを使うのではなく、システムとして長期的に管理運用していくためのスキルを身につけてください。
バックナンバー
第24回:LVMについて
第23回:SELinuxについて
第22回:NTPサーバーとして時刻を提供する
第21回:NTPによる時刻合わせ
第20回:anacronによるシステムジョブの実行