バックアップ方法について

今回は、バックアップ方法について特に重要となるポイントを解説します。【連載コラム:Linuxシステム管理標準教科書を読む(26)】

最終更新日:2025年05月07日

Linuxの基本的なスキルを習得したら、Linuxサーバーをシステムとして長期に運用管理していくためのスキルを身につけるのはいかがでしょうか。このコラムでは、「Linuxシステム管理標準教科書」の全体調整を担当した筆者が改めて大切なポイントを解説していきます。

バックアップの方法は、ツールの選定からバックアップをどのように行っていくのかなど、多岐に渡ります。今回は特に重要となるポイントについて解説します。


バックアップメディアについて

バックアップは、様々なメディアに格納できます。

  • テープ
  • NASなどのディスクストレージ
  • クラウドストレージ

テープへのバックアップ

以前はバックアップ先のメディアといえばテープが一般的でした。これはハードディスクの容量が大きくなる以前、テープの方が容量が大きく出来たり、物理的に別の場所に移動させるのが容易だったためです。容量については現在でも大容量のテープメディアがあるためバックアップメディアとして利用されていますが、利便性が劣るため使用しないケースも増えています。

NASなどのディスクストレージ

テープメディアの代わりに使われることが増えているのがNAS(Network Attached Storage)のようなハードディスクをベースにしたストレージです。USBで接続するハードディスクなどもここに分類できます。テープのようなデバイスに比べてシステムに組み込まれて普通に使われているため、扱いに特別なノウハウが必要がないことや、ハードディスク1台あたりの容量が大容量化したことでバックアップ先としての容量を確保しやすくなったことなどがよく使われるようになった理由として挙げられます。ネットワークで接続できるので、物理的に隔離したい場合には、インターネットなどの回線を経由してバックアップデータを送信することができます。

クラウドストレージ

クラウドストレージは、ファイルサーバーの代わりとして使われるのと同様、バックアップデータを保管先としても活用されています。物理的に隔離できるのはもちろん、どこからでもネットワーク経由でデータを取り出すことができるメリットがあります。また、バックアップメディアとしての管理も不要です。ただし、容量が増えていくと課金の金額が増えていくことや、リストア時に回線速度によっては時間がかかることなど、考慮すべき点があることにも注意が必要です。

フルバックアップと増分差分バックアップ

バックアップには大きく分けて、バックアップ対象をすべてバックアップする「フルバックアップ」と、フルバックアップ後に追加修正されたデータをバックアップする「増分差分バックアップ」があります。
バックアップの容量が少ない時には毎回フルバックアップで構いませんが、フルバックアップの容量が大きく時間がかかる場合には、定期的なフルバックアップと、その間は増分差分バックアップで容量を節約する、という組み合わせでバックアップ計画を立てる必要があります。
また、バックアップ対象や使用するツールによっては増分差分バックアップが行えない場合があるので注意が必要です。

増分バックアップと差分バックアップ

増分差分バックアップとひとまとめにしていますが、さらに増分バックアップと差分バックアップの違いがあります。
増分バックアップは、前回のバックアップから増えた分をバックアップします。前回のバックアップはフルバックアップでも増分バックアップでも構いません。リストアするためには、フルバックアップとすべての増分バックアップが必要となります。1回あたりのバックアップ量は少なくなりますが、リストア時にすべての増分バックアップが必要となるので、バックアップの管理が重要になります。
差分バックアップは、フルバックアップからの差分をすべてバックアップします。リストアには最後の差分バックアップがあれば済みますが、徐々に差分バックアップの容量が増えていくことになります。
どちらが優れているということはありませんので、データがどれぐらい増えるのか、バックアップ管理の煩雑さをどれぐらい許容できるのかなどを考慮の上バックアップを計画します。

バックアップと静止点

バックアップは基本的にファイルシステム上にあるファイルをバックアップしますが、システムはデータをメモリ上に配置し、必要に応じてファイルに書き出す動作をします。そのため、バックアップ時にまだ書き込まれていないデータがメモリ上にある可能性があります。このようなことが起きないよう、バックアップすべきデータがすべてファイルに書き込まれている状態のことを「静止点」と呼びます。

コールドバックアップ

静止点を作るには、一番分かりやすいのはシステムを停止することです。OS自体をシャットダウンしたり、データベースなどのソフトウェアを停止することで静止点が作られます。計画的にシステムが停止できるのであれば、システムを使わない時間に静止点を作り、バックアップを行います。これを「コールドバックアップ」と呼びます。

ホットバックアップ

一方、システムを止めることができない場合、システムを動かしながらバックアップするため、メモリ上のデータはバックアップできません。これを「ホットバックアップ」と呼びます。ホットバックアップでは、リストア時にメモリ上のデータは復元されない可能性があることを許容する必要があります。このようなことが起きないよう、データベースなどではデータの変更に対するログを記録しておき、リストア時にログからバックアップされていないデータを再現するような仕組みを取り入れているものもありますが、ログ自体を適切にバックアップしていなければ意味がなくなります。バックアップ対象の動作もバックアップ計画を立てる際に重要な要因となります。

壊れないシステムはない、という現実を考えると、バックアップは無くてはならないものになります。きちんとバックアップし、そしてそれをリストアできるようになる必要があります。


筆者紹介
宮原 徹 氏

宮原 徹 氏

株式会社びぎねっと

Linux標準教科書、Linuxサーバー構築標準教科書などの監修者。LinuCレベル1/レベル2 Version10.0の改訂作業にも協力。また、幅広いOSSに関する情報提供の場として「オープンソースカンファレンス(OSC)」の企画運営も。

<Linuxシステム管理標準教科書とは>

Linuxシステム管理標準教科書」(システム管理教科書)は2015年4月にリリースされた標準教科書シリーズの1冊です。Linuxシステムの運用管理という観点で書かれており、システム管理者という業務において知っておかなければならない基本的なトピックが解説されています。「Linux標準教科書」「Linuxサーバー構築標準教科書」でコマンド操作やサーバー構築の基本を学んだら、このシステム管理教科書を読んで、単にLinuxを使うのではなく、システムとして長期的に管理運用していくためのスキルを身につけてください。

バックナンバー

第25回:バックアップについて
第24回:LVMについて
第23回:SELinuxについて
第22回:NTPサーバーとして時刻を提供する
第21回:NTPによる時刻合わせ

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