LinuCレベル2 202試験の例題と解説
主題2.10電子メールサービス
2.10.1Postfixの設定と管理
LinuCレベル2 202試験の試験範囲から「2.10.1 Postfixの設定と管理」についての例題を解いてみます。
メールボックスをMaildir形式で利用したい場合、main.cfに記述すべき設定を1つ選択してください。
- virtual_mailbox_base = /var/spool/Maildir
- mail_spool_directory = ~/Maildir/
- home_mailbox = Maildir/
- mailbox_type = ~/Maildir/
※この例題は実際の試験問題とは異なります。
解答と解説
正解は、「3. home_mailbox = Maildir/」です。
Maildirとは、メールを保存するための形式のひとつで、「1通のメールを1つのファイルとして保存」する仕組みです。
例題の各選択肢の詳細について解説をします。
1. virtual_mailbox_base = /var/spool/Maildir
誤りです。
virtual_mailbox_base は、仮想メールユーザー(virtual mailbox)を使うときのメール保存先のベースディレクトリを指定する設定項目であり、Maildir形式でメールボックスを利用するための設定ではありません。本設定を使用する時は単体ではなく、virtual_mailbox_domainsやvirtual_mailbox_mapsといった、他の仮想メールユーザー関連の設定と共に使用します。
以下はvirtual_mailbox_baseの使用例です。以下のように設定した場合、Postfixは/var/mail/vhosts配下に、仮想ドメイン・ユーザーごとのMaildirを作成してメールを保存します。
virtual_mailbox_domains = example.com
virtual_mailbox_base = /var/mail/vhosts
virtual_mailbox_maps = hash:/etc/postfix/vmailbox
virtual_minimum_uid = 100
virtual_uid_maps = static:5000
virtual_gid_maps = static:5000virtual_mailbox_domains
Postfixが「仮想メールボックスとして扱うドメイン」を指定します。
virtual_mailbox_maps
各メールアドレスに対して「メールボックスの保存場所」を対応づけるマップファイルを指定します。
この場合、/etc/postfix/vmailboxには以下のように記述します。
user1@example.com example.com/user1/
user2@example.com example.com/user2/user1,2のディレクトリ指定の末尾に/を付与しているため、ファイルはMaildir形式で保存されます(末尾に/を付与しない場合、mbox形式で保存されます)。
virtual_minimum_uid
仮想メールユーザーのUIDが、この値より小さい場合は拒否する設定します。
通常、Linuxのシステムアカウント(rootなど)はUIDが0〜99のため、誤ってroot権限でメールを書き込むことを防ぐための設定です。
virtual_uid_maps
仮想メールの保存時にファイルに付与されるUIDを指定します。
virtual_gid_maps
仮想メールの保存時にファイルに付与されるGIDを指定します。
2. mail_spool_directory = ~/Maildir/
誤りです。
mail_spool_directoryは、Postfixがローカルユーザーにメールを配送するときの保存先ディレクトリを指定し、指定したディレクトリに対しmbox形式で保存する設定です。Maildir形式で利用できないため、誤りとなります。
3. home_mailbox = Maildir/
正しいです。
Maildir形式を利用するには、main.cfファイルのhome_mailboxパラメータで、ホームディレクトリからの相対パスでメールボックスディレクトリを指定します。
4. mailbox_type = ~/Maildir/
誤りです。
mailbox_typeというパラメータは存在しません。
メールサーバの運用では、メール保存形式の理解が欠かせません。Postfixでは、主にmbox形式とMaildir形式の2種類が利用されます。それぞれの特徴を理解し、運用環境に最適な方式を選択することで、安定したメール管理が可能になります。形式の違いを正しく把握して、効率的で信頼性の高いメールシステムを構築できるようにしましょう。
例題作成者
株式会社デージーネット 経営企画室 大河内 龍馬