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LPI-Japan 理事長が語る
LinuC 出題範囲改定の狙い

 エルピーアイジャパン(LPI-Japan)が、従来のLPICに変わる新しいLinux技術者認定資格「LinuC(リナック)」を開始してから間もなく2年となる。初期リリースでは、受験予定者の混乱を避けるためにLPICと同じ出題範囲でLinuCの認定試験を開始したが、今春にはその出題範囲を大きく改定する。改定の狙いを2019年7月に新たに理事長に就任した鈴木敦夫が語る。

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LinuCを立ち上げた意味

 私たちが2018年にLinuCを開始した経緯は、試験の品質問題がきっかけです。私たちはそれまで20年間にわたってLPICに深くかかわってきましたが、諸般の事情で試験の品質を保証できなくなり、新たにLinuCを開発しました。これまでは、できるだけ市場に混乱が起きないように、同じ出題範囲で認定価値が保証できるものを、信頼できる団体としての責任を果たすという意味でLinuCを提供してきました。

 現在までの認定実績データから、理解しないまま問題と解答を覚えてもLinuCでは通用しないことがわかっており、認定試験を正常な状態にすることができたと考えています。

クラウドの重要性とアーキテクチャーを理解する重要性

 新バージョンとなる新しい出題範囲の試験開発においては、非常に多くの方々へのヒアリングとアンケートを実施し、今求められている人材像を明確化してきました。それをベースに現場で様々な役割で活躍している技術者や有識者の方々と議論を重ね、しっかり内容を検討してきました。その過程で、パートナーのSI会社やLPI-Japanアカデミック認定校にも意見を募集して感じたのは、まずクラウドをきちんと理解することの重要性です。今までLinuCはサーバーサイド技術者向けの試験でしたが、クラウドのこともわかって欲しい。それもアーキテクチャーとしてきちんと理解して欲しいということです。

 現在、I T系の教育マーケットではAWSなどのパブリッククラウドの教育が人気です。ただ、最初からプロプライエタリな技術を学んでしまうと、根本的な技術のところがわからず、技術者としての成長を考えたときによくない。基本ができていないと、技術の空洞化が起きてしまいます。きちんと中身が分かっていれば、パブリッククラウドを勉強したときにも「これはこういうことなのだ、ここはこういうことに気をつけなければならない」という勘が働き、理解も早く、深くなります。

 そうした部分でLinuCは大きな役割を果たせると思っています。Linuxの技術は、ハードウェアアーキテクチャーからしっかり作られています。ハードウェアのアーキテクチャーに根差した操作ができるモジュールがあり、それを組み合わせてその上のサービスができていて、それらが全部つながってOSができている。だからLinuxを勉強するとコンピューターのアーキテクチャーが理解できるのです。そうすることで、勘も働くようになります。そこがLinuxを学ぶべき最大の理由であると言えるでしょう。

LinuCを技術者認定の中核となる試験に育てたい

 昔も今も、全体のアーキテクチャーや物事がどういうことなのかがきちんとわかる、わかろうと自分で能動的に調べる技術者が求められています。オープンテクノロジーの世界は、ネットで調べれば大体のことがわかり、OSSであれば中も見ることができるから、アーキテクチャーがすべてわかります。ですから、LinuCを通してLinuxを学べば、技術者としての基本的な能力とその時代に合った知識が身に付き、認定により自分の価値を証明できる。これによって自己解決できる技術者を育成したいと考えています。

 出題範囲改定後の試験の枠組みについては、レベル1からレベル3までという建て付けは変えず、レベル1とレベル2の出題範囲を刷新します。今回の改定では従来のサーバーサイドに加えてクラウド領域をカバーする形になります。また、アーキテクチャーの要素やオープンソースのリテラシーの追加、使われなくなった技術の削除、新しい技術の追加などITシステムの現場の実情や今後を見据えたうえで、広範囲に見直されています。

 LPI-Japanの認定活動は、Linux技術者の育成からオープンソースソフトウェア技術者(OSS-DB/PostgreSQLなど)に広がり、フロントエンドのオープンテクノロジーであるHTML5まで広がっています。その基本になるのがLinuCです。IT技術者の基本的な常識として、LinuCをクラウドも含めコンピューターシステムのアーキテクチャーの勉強をするための必須の認定として活用して、本質的な技術者育成に役立てて頂きたいと願っています。

 今春にデリバリーされる新しいLinuCに、ご期待ください。

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