LinuC技術解説セミナー:LinuCレベル1【オンラインセミナー・特別講演】
「さらなる高みへ!IT技術者のための”自分アップグレード”セミナー」(2024年7月29日開催)より


基本の枠を一歩超えたLinuCレベル2の取得で
実務に使える技術とエンジニアとしての自信を得ました

株式会社ゼウス・エンタープライズ LinuCエバンジェリスト
鯨井 貴博 氏

クラウド、ネットワーク、IoTや生成AIなど、次々に登場する新たなテクノロジー。ITエンジニアには、これらを使いこなし、顧客に求められるシステムを実現していく「実装力」が求められている。その実力の証となるのが認定資格であり、Linux技術者には、すでにLinuCレベル1を取得している人も少なくない。では、さらにその上のLinuCレベル2では何が変わり、どんな実力が身につくのだろうか。株式会社ゼウス・エンタープライズ LinuCエバンジェリスト 鯨井 貴博氏による講演「LinuCレベル2の取得で何が変わる? いま現場スキルのあるエンジニアが求められる理由」からダイジェストでご紹介しよう。

ゼウス・エンタープライズの鯨井貴博です。当社はLinuxに特化した業務委託やIT教育事業を行っており、その中で私はLinuCエバンジェリストとして、Linux学習者の皆さんを対象にしたセミナーのインストラクターなどを務めています。LinuC認定は、レベル3まで取得済みですが、今回は私がLinuCレベル2を取得した時の体験を交えながら、お話をしていきたいと思います。

Linuxの認定取得を皮切りに、IT技術者としてのキャリアをスタート

本題に入る前に、少し私の経歴をお話ししましょう。実は私がIT業界に入ったのは、30歳になる少し前でした。それまでは大学を卒業して8年くらい建設・土木業界で働いていましたが、私のITとの接点といえば大学時代にたまたまコンピュータ室にあったWindowsを使ったことがあるくらいでした。

その当時(2000年ごろ)の建設・土木業界というのは、まだまだ全然デジタルが浸透しておらず、そこにいた人間が突然IT業界に入ったわけですから、これはもういろいろ勉強しなくてはなりません。また同期入社にはIT経験者も大勢いるので、彼らに負けないように経験を積んでキャリアアップしたいと考えて、システム構築の現場に行かせてもらったりもしました。

その後サポートなどの業務も経験して現在のインストラクター職に至るわけですが、セミナーなどでは過去に自分がわからなかったことを思い出して、初心者や学習者の目線に立ってお話しするように心がけています。その他には、Open Source Summit JapanというThe Linux Foundation主催のイベントで、ボランティアリーダーとして運営に携わるなど、自分の幅を広げる試みにチャレンジしています。

さて、本題の資格取得のお話ですね。私がIT業界に入ったのは2007年でしたが、最初に取ったのがLinuxの認定資格でした。その後はLinux以外にもネットワーク資格のCCNA、IPAの基本情報技術者試験、HTML 5プロフェッショナル認定やクラウド基盤の認定、さらに最近はJDLAのディープラーニングG検定。また、いちばん新しいところでは、Kubernetes技術者認定のCKA-JP/CKAD-JPと範囲を広げてきました。こうした各種の認定取得を通じて得た知識が、現在の私のインストラクターとしての重要なバックボーンになっていると言ってもよいでしょう。

Linux技術をスタートに、多種多様な技術分野の認定を取得してきた

LinuCレベル2を取ったきっかけは、レベル3の「認定第1号」のため

この記事をお読みの皆さんは、Linuxに関心のある方が多いので、なぜ私がキャリアの最初にLinuxを選択したのか、またその認定資格としてLinuCを選んで何がよかったのかをお話ししましょう。

まず理由の1つ目は、株式会社ゼウス・エンタープライズがLPI-Japanのプラチナスポンサーであり、LinuCのアカデミック認定校でもあるということでした。しかし、それにもまして大きかったのは、自分のキャリアプランとして、Linuxを使ってサーバーを構築できるITエンジニアになりたいというのがありました。

そのためにも、単に決められたコマンドを叩いてシステムを操作するのではなく、その操作を行う理由や背後の仕組みを、ちゃんと理解して使いこなせる知識やスキルを身につける必要があります。それには、必要なスキルを網羅的にカバーしている資格を取得することが最短の道だな、と思ったのです。そこで当時あったレベル1からレベル3の認定を全部取得し、そこからいろいろなことが分かってくるようになりました。

中でも、今回のテーマであるLinuCレベル2の取得ですが、実は私の場合、LinuCレベル2が目標ではなかったのです。ちょうどその当時、新たに上位認定としてレベル3がリリースされるという発表があり、ぜひベータ試験を受けようと思いました。ところが、これはレベル2を取得していない人はレベル3の認定が受けられないという。でも、まだ私はレベル1しか取っていない。それで、駆け込みでレベル2の認定試験に申し込んだのでした。

なぜそんなにベータ試験が受けたかったのかというと、世の中の多くの認定資格というのは、ベータ試験で認定取得すると「認定第1号」になれたり、資格によっては表彰をしてもらえたりというイベントがあったのです。私も、どうせ認定を取るなら「第1号」になりたいという遊び心もあって、ちょっと欲を出してレベル2を取りに行きました。

「なんだ、そんな理由か」と言われてしまうかもしれませんが、自分のモチベーションを上げる意味でも、こういう遊び心って意外に大事なんです。同じように、ACCELという、これもLPI-Japan が当時運営していたApache CloudStack 技術者認定試験でも、ベータ試験に合格してトロフィーをいただきました。当時は仮想基盤のことは全然知らなかったのですが、認定第1号が欲しくて必死で勉強した結果、その分野の知識もマスターできたので、遊び心も決してムダではないと自分では思っています。

 

「認定第1号を取るぞ!」という遊び心も、モチベーションアップには大いに役立つ

レベル2取得で変わったのは、「自信を持って仕事ができる」こと

LinuCレベル3の「認定第1号」を獲得するためという、いささか「不純な動機」ではあったものの、レベル2取得のために頑張ったことは、私のITエンジニアとしてのキャリアアップに確実に役立っています。そこでここからは、「LinuCレベル2を取得して何が変わったか?」について、少しご紹介していきたいと思います。

LinuCレベル1は、Linuxのいわゆる「基本知識や基礎技術」の力を見る試験です。それがレベル2になると、それらの知識や技術を使って、実際に何かをやってみる。例えばサーバーを構築するとか、システムを使うだけでなくカーネルの中身までを詳細に理解する能力を要求されるようになります。つまり「知っている知識」を「使える知識」として、自分の血肉として取り込めているかを見られるわけですね。

では、それができて、みごとLinuCレベル2を取得できた場合、ITエンジニアとしてはどんな変化が起きるのでしょうか。私の場合は、例えばサーバー構築にしても、仕組みを理解するだけでなく、サーバー構築自体を仕事として自信を持って行えるようになったというのがありました。もちろん勉強で個人的にサーバーを作るのも楽しいですが、それを自分が「業務」としてお客様に自信を持って提供できる。プロのITエンジニアの自信とでも言うのでしょうか。そういうものが自分の中に生まれたというのが、もっとも大きな変化でした。

もう1つ大きな変化は、ある知識が他の知識と関連して広がっていくということ。例えば実際にサーバー構築を行う場合、サーバーだけの知識ではできません。周辺分野の関連する知識と合わせて肉付けしながら進めるというのが、LinuCレベル2以上になってくると要求されます。私の時も、まだ仮想環境は普及し始めの頃でしたが、それを使ってサーバー構築する方法などを学びながら、仮想サーバーやネットワークに関する知識を深めることができました。同様にセキュリティやデータベースの知識も、身につけることができたのです。

では、こうした変化が実際のITエンジニアの仕事の中でどう生きるのかというと、「周囲の評価が変わってくる」というのが挙げられます。現場で他の人たちと一緒に仕事をする時に、メンバーの中で「なんか、いろいろなことを知っているな」と感心させられる人っていますよね。そういう人に、自分も少しだけ近づけたのかなという感覚が、LinuCレベル2を取得してから自分の中にも生まれました。

おそらく今、LinuCという認定資格がITの現場にマッチしている理由としては、これがあるのではないかなと思っています。つまり、開発や運用の現場で本当に必要とされている人材~いろいろなことを知っていて、仕事の中で出てくる課題や疑問をなんとか工夫しながら解決していけるエンジニア~というイメージが、LinuCが認定をするエンジニア像と一致しているんじゃないかと、私自身は思っています。

 

仕事に対する自信や、実務に使えるさまざまな分野の技術が理解できるように

「その先」のキャリアアップにつながる体系が、LinuCの大きな特長

ここまで読んで来られて、「レベル2のことは、だいたい分かった。でも、その先のレベルアップはどうなるの?」と思っている方も多いでしょう。実はひとことで言って、「ちゃんと、その先につながっている」のが、LinuCのいいところなのです。

下の図を、ご覧になってください。レベル1で基礎を固め、次はレベル2で実際のサーバーを始めとしたシステム構築の知識を軸に、知識の分野やスキルの幅を広げていきます。そしてレベル3になっても、それまでとまったく違うことを学ぶのではありません。むしろレベル2までの蓄積をさらに活かすために、異種混在環境や仮想化といった、最新のシステムをつくるための実践的な能力を積み重ねていくのです。つまり、「今勉強していることが、その先の勉強に確実につながっていく」のが、LinuCならではの強みであり、学ぶ人にとっての面白さと言ってよいでしょう。

各レベルで学んだことが、確実に次のステップにつながっていくのがLinuCの特徴

さて、最後にLinuCエバンジェリストとして、皆さんに「LinuCレベル2の取得がおすすめである理由」、つまり職業としてのITエンジニアを目指す上で、なぜLinuCレベル2が役に立つかを、私の経験に即して少しだけお話ししておきたいと思います。

私の場合、LinuCレベル2を取得したことで、サーバー構築などを「自分の仕事として自信を持ってできるようになった」というのは、すでにお話ししました。では、この変化を会社やプロジェクトの中でどう見られているか。つまり「周囲からの評価」としては、どう変わったでしょうか。

新しいプロジェクトを始める時など、当然現場の中でふさわしいメンバーを探すことになります。この人ならできそうだなとか、この人でもダメならもう諦めようとか、プロジェクトリーダーなどはいいメンバーを探すわけですが、そういう時に自分に声をかけていただく機会が増えたと感じています。もちろん、そういう声をかけてもらえる機会が増えて現場で認めてもらえているという実感が、もっと腕を磨いて期待に応えていこうという次へのモチベーションにつながっているのは言うまでもありません。

こうしたことを振り返ってみて、結局LinuCレベル2って、私自身にとってどういうものだったのかと考えてみると、昨今IT業界というのはどんどん変化していますが、そこにキャッチアップして活躍できる技術者になろうとする時に、本当に最適な認定資格だったと思います。

エンジニアとしてのスタート時点で、もし何の目標になる資格もなく、またはその認定を取って自信をつける機会もなかったとしたら、今自分はどうなっていただろうかと思います。そうした意味で、Linuxを学ぶ皆さんにインストラクターとして接するようになった今も、エンジニアとしてのスタートでもあるLinuCは私の中で大きな存在となっているのかなと思います。

もしこの記事をお読みになって、自分もLinuxを勉強してみたいと思った方がいれば、まずは何かを始めてみてください。もし何をしていいか見当がつかないというのであれば、私が講師を務めるLinuxのセミナーに、ぜひ一度足を運んでみてはいかがでしょうか。少しでも皆さんのキャリアアップのお手伝いになれれば、とても嬉しく思います。

[特別講演]LinuCレベル2の取得で何が変わる?いま現場スキルのあるエンジニアが求められる理由

株式会社ゼウス・エンタープライズ
LinuCエバンジェリスト 鯨井 貴博 氏

2000年にVine Linux 2.0で一度挫折を経験。 その悔しさを忘れきれず、他業種から2007年IT業界に転職し、Linuxに再チャレンジ。 SE・商用製品サポート・インストラクター・プロジェクト管理などを経験し、現在に至る。 自分自身が学習で苦労したことを元に、初心者を含む受講者に分りやすい講義を行うように心がけている。 自身が興味の向くIT技術などについて、Opensourcetehブログで執筆中。
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